一次言語と二次言語

 

三歳の節目

  喃語から始まった語音の習得に続いて、爆発的な語の習得(量的変化)、文の生成へと続く一連のことばの発達(質的変化)は、子どもがシンボルの世界に足を踏み込んだことを示します。    

 始めは≪物対ことば≫の対応でしかなかったものが、次第に時間的空間的制約を超えて般化され、シンボルの要素を濃くしていきます。 この大きな変化が三歳の節目です。

 この壁は子供に取ってかなり大きなもので、発達の遅れを持った子供の前に立ちふさがります。

 


 

九歳の節目

  二次言語の特徴は、対象の変化です。小さいときは自分の体験の周辺でことばを使っていますが、この段階に入ると、抽象化された聞き手を対象として話をすることが出来るようになります。    

 作文が書けるようになるのはそうした成長の証しです。

 音声を心象に結びつける「言語化」が進み、≪過去の経験を追想すること≫や、≪まだ経験したことのないものを想像する≫ことが出来るようになり、素晴らしい≪観念≫の世界を構築していきます。

  

  


 

  外言』と『内言』

 

  しゃべり始めの子供は、なんでも一度音声で表し、自分の耳で聴いて納得します。

このように音声化された言語を「外言」といいます。

 一方頭の中だけで操作する言語(信号が対象から離れて、象徴として使われたもの)を「内言」といいます。内言によって思考を組み立てることが出来るのです。

 

🌸3歳の壁(質的転換期)を越える時のキーマンは親、  🌸🌸9歳の壁を超える時のキーマンは教師だと言われます。   周りの大人たちがどのようなことばをかけ、どのように受けてやるかでその子供の言語能力に大きな差が生まれます。


内言語の世界(言語化された思考)

言語化されない思考は言語化された用語では思い出せません。言語獲得以前の幼児期の記憶が無いのはそのためです。

 

•私たちは高度に言語化された「意識の世界」を持っています。(意識とは大脳の過程を脳全体の機能の中に統合する事)
・・人類の進歩は「言語」の進歩を伴います。
数学・美学・音楽・最近のコンピュータ言語も言語の一変種で、論理は脳の神経生理学に基ずく意識の世界で構築されます。

前言語段階の子供の世界・未開人の前論理思考は共に意識が極めて不完全。

精霊崇拝・トーテム崇拝・夢の実現・同時に二か所で存在可能という思考・昨日と明日を区別できない事等・・哲学以前の思考形態・・

  そのようなものはいまだに現代人の脳からも消え去っていません。

      【参考資料  岡本夏生著 ことばと発達  岩波新書】